むかし、ある山のふもとに小さな村があった。村から町へ行くには、一つの峠を越えなければならなかった。
その峠には、古い言い伝えがあった。「明るいうちに越えろ。」
ある秋の日、若い男が町へ買い物に行った。友だちと話しているうちに、時間を忘れてしまった。
外に出ると、空はもう赤かった。暗くならないうちに峠を越えなければならない。男は急いだ。
しかし、坂を登っているうちに、日が沈んだ。まわりは真っ暗になった。男は道が分からなくなった。
そのとき、遠くに小さな明かりが見えた。近づくと、一人のおばあさんが立っていた。
おばあさん: 明るいうちに来ませんでしたね。今夜はうちで休みなさい。
おばあさんは男を自分の家へ連れて行った。男はそこで一晩休んだ。
男が寝ているあいだに、朝になった。目が覚めると、家はなかった。男は草の上で寝ていた。まわりは明るく、道がはっきり見えた。
男は村に帰って、この話をした。それから村の人たちは、子どもにこう言うようになった。「明るいうちに帰れ。暗くなってからでは、だれが助けてくれるか分からない。」